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企業のIoT化をどう進めるか

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澤 規仁

IoT時代でこれから起きることと、抑えておくべきポイント

「IoT」というキーワード、本当にトレンドワードになってきました。 わりとイメージされているのは、なんだかキテレツなガジェットであることが多いかもしれません。 「機器がインターネットに接続する」ということ自体は、例えば工場機械のリモート操作であったり、バスやトラックに車載されるGPS監視端末であったりと実は結構むかしからあります。

ではあらためて、IoTと言われているのは一体なぜなのでしょうか。ひとつは「機器をインターネットに接続させること」のコストが、革命的に下がる用意が整ったことにあるようです。

書評「DHBR IoTの衝撃」

最近発行された雑誌「Harvard Business Review」にて、マイケル・ポーター氏が、大変わかりやすくIoTを解説されていたので、ちょっとご紹介します。

マイケル・ポーター氏がイメージするIoTは、決して目新しい機器を生産することではなく、既存の機器が外部と接続することで、機器の能力(ケイパビリティ)が増大していくというものです。

例えば、トラクターが農業管理システムと接続され、気象や種子データベースなどと連動して種蒔きが自動化されます。さらに農家同士の連携、灌漑システムとの接続により、最適化アルゴリズムが実行されます。トラクター・メーカーは気づいたら農業オートメーション業界にいることになるかもしれません。

機器がインターネットを通じて世界中のシステムと接続することは、マーケットもビジネスモデルも変わる可能性があります。

IoTのビジネスの変え方は、はたして破壊的イノベーションとなりうるものでしょうか。 固定電話と携帯電話、証券サービスとオンライン取引、オフセット印刷とデジタル印刷のように、新たな市場が既存の市場を侵食するものになりうるでしょうか。 IT業界でいえば、メインフレームがPCサーバに駆逐されていったようなことが起きるでしょうか。

破壊的技術の歴史がそうだったように、大きな市場にすぐに迎え入れられることはなく、はじめは利益率が低く小さな市場で花開き、いつの間にか既存のビッグプレーヤーの市場と切り替わっていることになるのでしょうか。

IoT製品化のフレームワーク

マイケル・ポーター氏はIoT製品の定義を以下の4段階で設定しています。

  • 1.モニタリング(Monitoring)
    製品の状態や稼働状況、利用状況を取得する。

  • 2.制御(Control)
    製品機能の制御や、ユーザ・エクスペリエンスのパーソナル化。

  • 3.最適化(Optimization)
    モニタリング機能と制御機能を素に、アルゴリズムにより性能向上や予防診断など。

  • 4.自立性(Autonomy)
    モニタリング、制御、最適化を組み合わせて、製品の自動運用、他システムとの自動連携、自己診断と修理など。

各機能は1から順に、前段階の機能を前提としています。 たとえば、制御を行うためにはモニタリング機能が欠かせません。

製品のサービス化

製品は所有からサービスに変わります。例えば自転車は、クレジットカードで利用時間分だけ支払うことができるようになります。 製品が予約や決済システムと接続することで、顧客は従量料金を支払うだけで製品を使用できます。 「購入や保管の必要がないなら積極的に使ってみよう」というニーズが増える可能性があります。

ハードウェアの規格化

IoT製品はカスタマイズやパーソナル化を、頻繁なアップグレードによって速やかに効率よく可能にします。これは同時にハードウェアの規格化を促します。例えば、ディア・アンド・カンパニーの機械は、同一エンジンの馬力をソフトウェアで何段階にも切り替えることができます。

現在、ArduinoやRaspberry Pi、Intel Edisonなど、規格化された超小型のコンピュータが出回り始めています。 今はプロトタイプ向けの製品で、商用に組み込まれるものではないと市場からは認識されています。なぜなら組み込み製品は量産されるものであり、そこには量産を前提としたコスト計画や設計が必要だからです。

ですが仮に、超少量多品種、もしくはパーソナルカスタムなハードウェアという市場が存在したらどうでしょうか。

「(ハードウェアではなく)ソフトウェアに手を入れて、わずかな限界コストで迅速に手際よく製品をセグメントに特化させることができる」『DHBR 2015年4月号 IoTの衝撃』(p.56)

「これまで機会エンジニアが中心だったエンジニアリング部門は、 ソフトウェア開発、システム・エンジニアリング、製品クラウド、ビッグデータ解析といった分野の人材を補強しなくてはならない。」『DHBR 2015年4月号 IoTの衝撃』(p.57)

超高級化と従量化

製品のハードウェアは同じでも、格段に高いサービス、あるいは定期的に料金徴収が可能になります。 新しいビジネスモデルの可能性が開かれます。

「メーカーは、製品データの活用や、故障を予測、減少、修復する能力を背景に、製品性能を制御してサービスを最適化するための、かつてない能力を手にしている。」『DHBR 2015年4月号 IoTの衝撃』(p.66)

「顧客が最初に代金を一括払いするのではなく、継続的に使用料を支払う場合、製品性能の向上による運用コストの低減(省エネ効果など)とサービス効率の向上がもらたす便益は、メーカーが手にする。」『DHBR 2015年4月号 IoTの衝撃』(p.66)

データの所有

IoT製品で各種センサーデータの収集、活用をイメージされることが多くあります。 実際にどういった種類のデータを収集・分析すればよいのでしょうか。 これについて、現時点での蓄積データ保有で製品の具体的な差別化があるかといえばそうでもないと思われます。

ただこの先、製品に接続機能を持つことが標準となった場合、データの蓄積による アルゴリズム制御などが競争力になってくるのではないかと示唆されています。 また蓄積データを他者へ販売することにより、製品価格自体を抑えることができるかもしれません。 シェアを取った製品は、データのおかげでさらなる競争力を持つことが予想されます。

ただし、データを使う権利をどう確保するか、アクセス権をどう管理するかは大変センシティブな問題です。 製品の所有者がメーカーであっても、利用状況に関するデータは顧客に帰属する可能性があります。 誰が正当な帰属先になるのかの設定基準は、今後の重要な課題です。

製品インタフェースの開放(開放しない、全開放、一部開放)

競争に勝ち残るために、透明性の高いオープン・インタフェースを設けて、他社のシステムやプラットフォームに すぐに組み込んで貴重な役割を果たせるような製品を提供することが考えられます。

日本の市場では、垂直統合のため一部分の機能に対して、他社が参入することはあまり起きていません。 しかしこの先、ハードウェアの標準化・ソフトウェア化により、インターネットを経由したファームウェアの流通が起きたり、その結果、世界中で桁違いのコストダウンが起きたらどうなるでしょうか。

他社製品との接続をどこまで開放するか、自社でどこまでを製品提供するのか。 競争のやり方が変わってくるかもしれません。

メーカーの方へ

よく、メーカー勤務の方、特に新事業開発部などにいらっしゃる方々が、口をそろえてこうおっしゃいます。

「IoTで何かしたいのだけど、なかなかモノにならない」

「新しいモノを試作しても、量産化にGOが出ない」

「IoTって気になってるけど、何をすればいいのかわからない」

「変な製品を出してブランドを傷つけたくない」

ここで言いたいのは、新しいモノや新しいシステムをつくる必要はないのだ、ということです。 もう既に、十分に良い製品をお持ちのはずで、インターネットの先のすでにあるシステムと繋ぐだけで、 競争力のある製品ができあがるはずです。

PDF版もあるよ

ということで、IoTビジネスについての「何かと繋ぐ」という考え方の先にある未来の話でした。ご興味のある方はぜひこちらからお買い求めください。

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ダイヤモンド・ハーバード・ ビジネス・レビュー
2015年4月号 IoTの衝撃

ダイヤモンド社
定価:本体1,907円+税
発行年月: 2015年3月
雑誌コード:059690415